ゲスト:山口馬木也
MC:七味まゆ味・小早川俊輔
CoRich舞台芸術!チャンネル『劇トクッ!』は、今の演劇界を担う大注目の演劇人にお越し頂き、様々なトークを繰り広げる舞台芸術トークバラエティです。
ゲストは数々の舞台・映画・ドラマなどで活躍されている俳優の山口馬木也さん!2024年3月上演のこりっち初のプロデュース公演『イノセント・ピープル~原爆を作った男たちの65年~』の主役を務める山口さんの、ひょんなことから始まったという役者人生を紐解きます!
前半
七味
こりっち舞台芸術チャンネル「劇トクッ!」MCの七味まゆ味です。
小早川
小早川:小早川俊輔です。お願いします。
七味
それでは本日のゲストにご登場いただきましょう。ゲストは俳優の山口馬木也さんです!どうぞいらっしゃいませ。
山口
ル〜ルル〜ルルルル〜ルル♪(「徹子の部屋」のテーマソングを歌いながら登場)
小早川
ありがとうございます!!(笑)
七味
コメディ俳優さんなんですか?
山口
そうでございます。
七味
私ね、みんなが「馬木也さん」とお呼びするから、「馬木也さん」とお呼びしても大丈夫ですか?
山口
はい。もう何でも何でももう、はいもう何でも大丈夫ですよ。
七味
ありがとうございます!お忙しい中、本当にありがとうございます。
山口
いやいや、もうとんでもないです。
七味
先ほども、ちょっと言っちゃったんですけれども、ちょうど、CoRichプロデュースの舞台に今、主演で。
山口
そうなんです。今、稽古帰りです。
小早川
わぁ〜ありがとうございます。
七味
いかがですか?お稽古は。
山口
お稽古めちゃくちゃ楽しいですよ。
七味
そうなんですね。
山口
めちゃくちゃ楽しいです。
七味
あ〜よかった。どういうきっかけがあって受けてくれたんだろう?と、ちょっと訳は後で聞こうと思ってるんですけど。まずは、まずは、プロフィールからご紹介させていただきますね。はい。じゃあ、お願いします。俊くん。
小早川
はい。馬木也さんのプロフィールを、僕が絶対に噛まずに、読みたいと思います!行きます!
山口
山口:ず〜っと見てるから、俺(笑)
小早川
ありがとうございます!(笑)山口馬木也さん、岡山県出身、京都精華大学 洋画学科卒。特技は乗馬、剣道、殺陣、ドラム、ジャンベ、そしてゴルフ。端正なルックスと卓越した演技力、独特の存在感で、NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」など多くの作品に出演。ドラマ映画はもちろん、舞台にも多数出演。近年の舞台出演作はミュージカル『るろうに剣心 京都編』『巌流島』『ふるあめりかに袖はぬらさじ』『西遊記』など。そして、来月上演の、CoRich舞台芸術!プロデュース【名作リメイク】『イノセント・ピープル~原爆を作った男たちの65年~』では主演ブライアン・ウッドを演じられます。
七味
わぁ〜ありがとうございます。まさかここで出会える人生だって思ってなかったですから、すごく嬉しいです。
山口
こちらこそ、ありがとうございます。
小早川
ありがとうございます。
七味
いろいろ、この番組ではですね、子供の頃の馬木也さんのお話から伺っていきたいと思うんですけれども、いろんな番組で、もうお話されてるかもしれない。
山口
子供の頃を話したことはないですね。
七味
あっ、そうですか。じゃあ、レアな回ですね、嬉しい。
小早川
馬木也さんの50年の人生を紐解いていこうという。
山口
何もないと思うけど(笑)でも、まぁまぁ、思い出しながら喋りますので、よろしくお願いします。
七味
まずは子供の頃は、どんなお子さんだったのでしょうか。岡山県でお生まれになって、ずっと岡山でお過ごしだったんですか?
山口
そうですね、でも、あ、ずっとじゃないんですよ。あのね、ちょこちょこ行ったり来たりはしてたんです。いろんな家庭の事情でね。だけど基本、岡山ですね。
七味
岡山県て、きびだんごの?
山口
そうそうそうそうそう。
七味
金太郎の出身地。
山口
出身地?(笑)金太郎って、実在だっけ?金太郎じゃなくて、桃太郎だね。
七味
あ、桃太郎か!!
小早川
きび団子っていうとこまでわかってましたよね?
七味
あ、金太郎は足柄だ。失礼しました!
小早川
きび団子食べて、まさかり振ってたらね、もうおかしなことなっちゃいますからね。
七味
ごめんなさい。浅い知識で喋ってしまって。
山口
全然、全然(笑)それぐらいの方が面白いですよ。
七味
ありがとうございます!(笑)
七味
どんなお子さんだったんですか?
山口
なんかね、多分、すごい落ち着きがなくて、多分卑怯だった気がするな。
七味
そうなんですか?お子さんの頃に?
山口
うんうん。何かそんなイメージがあります。落ち着きがなかったのは確か。卑怯だったのも、多分確か。
七味
へぇ〜。でも卑怯ってことは、頭を働かせなきゃいけないっていうことだから、結構考えて行動するタイプだったんですか?
山口
う〜ん。どうなんですかね。なんか、いろいろ今思ってみると、なんか卑怯なことしてた気がするな、と思って。
小早川
「落ち着きがない」とかは、言われたりもするじゃないですか。大人の人とかに。「卑怯だな」っていうのは、どういうときに感じたりするんですか?
山口
いやなんかね、う〜ん。なんか、何をしたから「卑怯だ」っていうことはないですけど、そういうところが自分の中にはあるぞって思いながら、そこと戦っていた気がします。
小早川
潜在的な「卑怯」と幼少期は戦われていた、ということなんですね。
山口
そうそう。
七味
すごい高度なお子さんですね。
山口
高度じゃないんですけどね(笑)
七味
いや、でもすごいすごい。だって、「かわいい卑怯さ」とね「可愛くない卑怯さ」があるから、難しいですよね。
小早川
そうですよね。
山口
でも活発で、何か明るい感じだったとは思いますね。なんかみんなでワーッてやってると、率先してワーッてやるような人だったと思います。
七味
なるほど。ちょっと、さっき気になって、あんまり掘り下げたくないかもしれないけど、特技に、最後の方、ドラムにジャンベって言ってらっしゃって。いつ頃にそういうことをやられてたんですか?
山口
音楽は、中学校・高校ぐらいで、バンドを組んで、その時、ドラムをやってたんですけど。それで、東京に出てきてぐらいから、ある日なんか、アフリカの方の何か、何ていうか、公園を散歩してたら・・
小早川
アフリカの公園を散歩していたんですか?!
山口
いや、ごめんごめん。ちょっと、いろいろ順序が逆になってる(笑)公園をお散歩してたら、太鼓の音が聞こえて、そこに引き寄せられて行ったら、アフリカの人たちが何か演奏していて、その音色がすごいな、と思って、「何ですか?」って聞いたら、"ジャンベ"っていう、今は多分、知っている方は多いと思うんですけど、僕らの時っていうのはもう全くそれが何なのか分からなくて。ワイングラスっぽいドラムなんすけど、それで、その時に、興味があるなら買っていくか?みたいなことを言われて、それをそのまま買って、そこから始まったんですよ。
七味
へぇ〜!もう売ってもいたんですね?その広場に。
山口
そうそう。そこで売ってて、なんかその音色が、すごいなんか響いて。
七味
アフリカのリズムを奏でる太鼓、みたいな?
山口
でもね、当時教えてる人も誰もいなくて。
七味
確かに今でもね、詳しい方はジャンベって聞くとわかるけど。
山口
今はね、もうすごくポピュラーな楽器になりましたけど、その当時は全然誰も知らなくて、叩き方すらわかんなかったから、何か見よう見まねでやってたんですけど。
小早川
当時その公園で手に入れて、どこで練習したり演奏したりする機会があったんですか?
山口
あのね、その時に僕、バイクを持ってて、後ろに恋人のように乗っけて、くくりつけて、
小早川
ジャンベを?(笑)
山口
それで山行ったり、海行ったりとか、そこで何か叩いてましたね。
小早川
わぁ〜自然の中で。
山口
あと、その中に毛布とかそういうものを突っ込むと、ミュートされて、音が消音されるんで、それでパタパタやったりとか。
小早川
ジャンベの中に物を入れられるんですか?
山口
そう。なんかこういうワイングラスみたいになってて、中が筒になってて、そこにこう突っ込んで、そうすると音が静かになる。
七味
なるほど、すごい。豆知識ですね。その頃は、住んでらっしゃった場所としてはどの辺なんですか?
山口
あのね、ジャンベを買ったのは大阪なんですよ。住んでたのは京都で、たまたま大阪行って、なんか公園フラフラしてた時なんですけど、本格的にやり始めたのは、東京。
七味
じゃあ、もうその年代からいろいろ移り住み?
山口
そうですね、東京ではもう代々木公園で叩いてたんですよ。そしたら、何人かそういうのに興味がある人たちが集まって、何かこう、バンドができちゃったんですよ。
七味
へぇ〜!で、バンドもやってらっしゃってましたね。そうそう、パーカッションバンド?
山口
そう。それとは別のバンドを2つぐらいやってて、1つはもう、最終的に30人ぐらいになって。
小早川
すごいバンドですね!
山口
そう。それは打楽器ばっかりのバンドになって、もう1つは打楽器と、ベースと、ホーンセクションが5人、4人ぐらいいたのかな。そういうバンドで、ジャズファンクみたいなバンド。
七味
ちょっとでもね、あの打楽器だけで30人て、結構多いですよね?
山口
多いですよ。どんどんどんどん公園に集まってくるんですよ。
七味
なるほど。なんだこの音は?って。
山口
太鼓も、やっぱり多ければ多いほどそれだけ厚みが出たりするんで、やっぱりなんか、来るもの拒まず的な感じで、どんどんどんどん増えていっちゃって。
七味
今はもうやってないんですか?
山口
いや、もうやってないです。もうやってないです。
七味
今もやってたらなんかね、バズりそう。
山口
そうですよね。今の時代だとね、すごい面白いかもしれないですね。
小早川
1個気になったのが、馬木也さんの情報が、演劇とバンド音楽、でもこれ、京都精華大学 洋画学科卒。「洋画」って、「絵」ってことですよね?
山口
油絵科だったんすよ、僕は。そう。
小早川
どこで出会って、入学するきっかけになったんですか?
山口
いや、元々ね、作ることがすごい好きな人なんですよ。ものを描いたりとか、何か作ったりとかっていうのが元々好きで、それで、絵本作家になりたくて、そっちの道に行って、それがどこが近いか?日本画科?洋画科?っていうので、なんか洋画の方がちょっとおしゃれな感じがしたんでしょうね。で、洋画科に行ったんです。
七味
そうなんだ。じゃあ、もう本当小学生の時から図工とか、美術が好きで?
山口
大好き。大好き。そうですね。勉強とかは、まるっきり興味なかったけど、美術と、あと体育とかは好きだった。典型的な。
七味
そうなんですね。その頃読んでたり、ハマったりした漫画とか映画とか本とかってありますか?
山口
漫画はいっぱいハマったな〜。なんかもう手当たり次第読んでましたよ、当時は。
七味
じゃあ、もう好きな漫画はあったんですか?
山口
好きな漫画?でも僕らの時代っていったら、やっぱり「北斗の拳」じゃないですか?あと、「Dr.スランプ アラレちゃん」とか「ドラゴンボール」とか鳥山明さんとかの作品が、もう、ドストライクの時代ですよね。
七味
そうですよね。そういうのは”少年漫画”っていうんですか?
山口
はい。そこから、ややこしい漫画とか読み始める、みたいな。言っても多分わからないような(笑)
七味
じゃあ、コアなところも?
小早川
すいません、コアなところで1つだけ教えてもらっていいですか?
山口
コアなところ・・。でも、今はもう、コアじゃなくなっちゃったんじゃないかな?松本大洋さんとかね。「鉄コン筋クリート」とかね。当時はまだ、知る人ぞ知る、みたいなところだったんですけど。あとガロとかの、連載みたいなものとか。
七味
はい。今ね、そういう漫画原作の舞台とかもね、増えているから。
山口
そうそう、「鉄コン筋クリート」も映画にになりましたよ。アニメ映画にも。
七味
そうですよね。そのうち、読んでたものを馬木也さんがやるようになったりもするかもしれない。
山口
そういうのって幸せですよね。来ればね。
七味
作るのが好き、の中でも「絵」が特に好きとかそういうのはあったんですか?
山口
う〜ん・・・と、そうですかね。絵は好きでしたね。
七味
他の例えば「彫刻」とかに行かずに「洋画」へ?
山口
一応ね、彫刻もやったの。同等に好きだったのは陶芸。面白いんですよ陶芸って。すごく面白い。
七味
ヘぇ〜!どういうところでやったんですか?普通の学校とかでは、陶芸とかやらないですね?
山口
やらないんだけど、僕が高校のとき、そういう道に進みたいって。美術の先生とすごい仲良くなって、みんながお勉強で受験してる時に、僕は受験としても、そういう実技があるから、その先生のところへ行って。本当はねデッサンとか、絵を描かなきゃいけないんだけど、ろくろもさせてもらったりとか。
七味
え〜!すごい!
小早川
それが高校生のときなんですよね?
山口
そうです。教室の中ではみんな一生懸命勉強してたけど。一応、高校が進学校的なところだったから、僕以外はみんな勉強してましたね。
七味
じゃあ、特別扱いで?
山口
いやいや。そんなことないです。全然、全然。
七味
中高生のときの部活動は何をやられてたんですか?
山口
何もやっとらんです。遊び半分で、バスケとかテニスとか、陸上とかいろいろやってたけど、まともに1個何かやったのは、全然ないです。
七味
そうなんですね。でも逆にさっきも体育がお好きだったっておっしゃってたけど、多分運動神経がいいから、何でもできちゃうんでしょうね。
山口
ある程度、そこで器用になんとか、なんとなく振舞えるんですけど。しんどいの嫌なんですよ、基本。
小早川
そこはベースにあるんですね?(笑)
七味
わかる!私も疲れるのは嫌だ(笑)
山口
疲れるのすごい嫌なんですよ。
七味
でも、難しいですね。動くのは嫌いじゃないけど、疲れるまで行くと嫌なんですね。
山口
動くのもそんなに好きではないんです。
七味
そうなんですね。じゃあ、どっちかいうとインドアで、やっぱり何か作ったり、が好きなんですね。
山口
そうそうそう。
七味
じゃあ部活やらずに、あ、でも、ろくろ回したりとかはしてた?
山口
そうですね(笑)
七味
バイクとかはいつ(運転免許を)取ったんですか?
山口
それは大学に入ってからじゃなかったかな。
七味
洋画を学んだことは、役者人生に活かされていることとかありますか?今も描いたりはなさるんですか?
山口
たまにかな、たまにですね。でも活かされてることって、多分あるんでしょうね。何か大学で絵描いて学んで、思ったこととかっていうのは何かしら活かされているとは思うんですけど。役者を、何でやってるかって言うと、1番できなかったことなんですよ。
七味
役者をやることが?
山口
そうそう。だから、手も足も出なくって。あんまり人生において、その、何だろうな。そこまで(手も足も出ない)っていうのがなかったんですよ。ほどほどとりあえずみたいな感じだったんですよ。
七味
なるほど。
山口
それでなんか多分、未だに続けているのかな、みたいな感じですね。
七味
やっぱり未だに難しいし、未だに何かこう・・
山口
最近気づきましたもん。役者になりたくてまだ役者やってる感じ。未だに。
小早川
わぁ〜、かっこいい・・!
山口
かっこいいっしょ?いや、俺もこれを自分で思った時に、誰かに言おうと思って。
小早川
ありがとうございます!聞かせてさせていただいて。
七味
私も今、いいこと聞いちゃった。そうなんですね。
山口
そういうのがありますね。
小早川
でも1個気になったのが、絵だったり陶芸だったり色んなことに挑戦していって、演技にはいつ出会ったんですか?
山口
やる方ですか?やる方はね、東京に出てきてすぐぐらいのときに、全然お金がない時で、ある人の紹介で、何かそういうお話があったんですよ。元々は本当に申し訳ないですけど、全然興味がなかったんです。だけど、なんか、あの当時って、本当に華やかに映ってたし、芸能界とか役者さんっていうのが。テレビで見たり映画で見るしか機会がないじゃないですか。誰でもできると思ってたんですよね。みんなうまく簡単にやるから。だから、それで金もらえるんだったら全然OKと思って、入っちゃったんですけど。その話がさっきの話に繋がるっていう。
七味
なるほど。今も目指しながらやってる、みたいな感じですね。
山口
すんげえ難しくて本当にもう手も足も出なかったかな。
七味
その話をもらってもうすぐにこの活動がスタートしたって感じですか?
山口
いや、すぐ・・でもないんですよ、実は。
七味
逆に、このお仕事になる前は、何かやられてたお仕事とかはあるんですか?
山口
バーテンダーと、昼間は、なんて言えばいいんですかね。荷物運んだりとか、道路を掘ったりみたいな。「なんでも屋」っていうんですか?肉体労働を同時でやってて、身体壊して辞めましたけど。
七味
昼間も働いて、夜もバーテンダーで働いて?
山口
そうですね。
七味
でも確かにそっちの世界でも、特に夜のバーテンダーの世界でもファンとかね、ついちゃいますよね?
山口
夜の世界で働いてるときは、もうそれしか頭になかったような気がしますよ。
七味
なるほど。どんだけお客さんに付いてもらって、とか。
山口
女の子にモテるとかそういうことしか考えてなかった気がするな。
小早川
そういう年頃ですもんね。
七味
俊ちゃんも?
小早川
いやだって、そのときって、もうほら20歳前後っていうことですよね?そのことしかね、今でもそうですよ。
山口
今、おいくつですか?
小早川
今僕、30歳です。
山口
全然全然。
小早川
全然全然まだそれですよね。でも、ちょっと遡っちゃうんすけど、大学からこっちに上京する、京都から東京に来るきっかけってあったんですか?
山口
なんか色々なことがあって、ポイッて来ただけです。
小早川
ポイッて来たんですね。ジャンベと共に?
山口
うん、ジャンベとともに。そう、ジャンベってどうやって持ってきたんだろうな?あ、それは、姉ちゃんが東京にいたんですよ。姉ちゃんのところに転がり込んで、四畳半・一間・風呂なし・ 便所だけ、みたいなとこ。
小早川
おぉ〜ブルースっすね。
山口
そうでしょ。姉ちゃんとこの距離で寝てるっていう(笑)
七味
お姉さん年とか近いですか?
山口
4つ上でしたね。
七味
そうなんだ。じゃあ東京も、何か東京でやろう!っていうよりは、お姉さんが居たし家もあるしっていう?
山口
はい。ポイッて来ただけです。
七味
そうなんですね。どうでしたか?土地の違いとか、ありましたか?
山口
いや、ありましたよ。東京へ来た時、お祭りだと思いましたもん。あまりの人の多さに。「今日お祭りがあるんだ!」と思って、当時屋台とかも出てたり、あ、屋台?出店?みたいのが出てたんですよ、ベビーカステラとか。「あ、お祭りだお祭りだ!」と思って行って。で、ある人に「飲み屋さん探してませんか?」みたいなこと言われて、「今日はお祭りですか?」って聞いたら、「祭りです」って言われて。
七味
しっかり騙されてる(笑)
山口
そう、しっかり騙されて、しっかりボラれたっていうね(笑)東京怖いって思って。
小早川
怖いっすね(笑)
七味
来たときからね、そういう洗礼を受けて。役者として、デビューされての失敗談は何かありますか?
山口
失敗は、ずっと失敗してるからな〜。大きな失敗談みたいなのはね〜・・。
七味
小ちゃくてもいいですよ。大きくてもいいですけど。
山口
う〜ん。最初なんて、いやもう、全部「やっちまったな」だと思いますよ。初舞台、僕、蜷川幸雄さんなんですけど、もう出だしから全部失敗ですよ。
七味
それは本番ですか?稽古?
山口
稽古ですね。蜷川さん、今でも忘れない。もう本当に。「お前は、今いない下手くそだ」と言われました。「お前のその下手くそなのは、50年前の下手くそだ」って言われた。今の子は、最低でもあるレベルは保ってる、と。「50年前にいた下手だ」と言われた。
七味
!!!
山口
びっくりしますよね。俺もびっくりしたけど。
七味
すごい!じゃあ蜷川さんにとっても衝撃的な?
山口
そうですね。もともと芝居を見てとか好きでとか、何かを訓練した人じゃないんで、当然ちゃ当然なんですけど。
七味
え、初舞台が蜷川さんってことですか?!
小早川
すごい!おいくつのときですか?
山口
28歳なの。だから遅いんですよ、俺。仕事始めたこと自体。この仕事にたどり着くまでに色々あって、ちゃんとお仕事させてもらえるようになったのが、28歳ぐらい。
七味
ヘぇ〜!初舞台が初デビュー?それとも何か・・・
山口
いや、他にもちょっとやってたんですけど、初は多分映画のオーディションか何かに行って受かって、それで行って、っていうのがそうなんですけど、その後すぐぐらいに蜷川さんのやつをやってて。そう、今思い出した。なんかね、「お〜い」って向こうの方の人に喋りかけなきゃいけない。「お〜い、こっち〜!」みたいな。この「お〜い」が出来なかった。もうずっと「お〜い!!」って叫んで、いやいや違う。遠くの奴を呼ぶんだ、みたいなことを言われても全然できなくて、それすらが。今はなくなったけど、ベニサンスタジオっていうのがあって、そこで稽古してて、俺2時間ぐらい前に行って、そこの扉開けて、200mか300mぐらい向こうにいる人に向かって、ずっと振り向くまで「お〜い!!」ってやってたら、苦情が来て、やめてくれって言われた(笑)馬鹿かって言われたよ(笑)
七味
苦情が来ちゃった(笑)
小早川
窓開けたら来ますよ苦情・・・(笑)
山口
でも今考えたら、すごい本当に、すごい馬鹿だなって思うんだけども。
七味
いやいやいや、お1人でやってたんですか?自主練として?
山口
そう。基本すごいなんか、勘違いはしてるんですよ。今思うと、ちょっとおかしいでしょ、絶対(笑)
七味
いやでも、そういうのができた時代なのかなって。
山口
岡山じゃないじゃん。東京の、いってもあそこも住宅街でしょう。
小早川
50年前にもいなかったんでしょうね(笑)
山口
何も気にせずやってて。
七味
でも気概がありますね。
山口
気概とか何かね、そういうことにすがるしかなかった。できなかったから、もう何も。
七味
でも「お〜い」ができてないって言われて、自分でできてないことはわかるんですか?それとも、できてるんだろう、とか思ってるんですか?
山口
何もわからない。なんかもうただひたすら必死、みたいな感じで。だから本当に、不思議。なんかそんな自分もいたな、と思って。
七味
そのときに何か他に蜷川さんからもらった、覚えてる言葉とかあったりしますか?
山口
今ベースにいつも考えて思うことっていうのは、やっぱり蜷川さんが稽古場で言ってたことっていうのがどうしてもベースにはあるんですけど。う〜ん。名言的に何か覚えてるかっていうよりも、もうなんか肌感で覚えてる感じですかね。ただ、ずっとどこかにいる感じですよね。
七味
お稽古は、1ヶ月とか1ヶ月半とか?
山口
そうですね。
七味
蜷川さんとは、それ以降もご一緒に?
山口
3~4回ぐらいはご一緒させてもらいましたかね。
七味
でも蜷川さんの舞台で、すごく映えますよね。
山口
そんなことないですよ。もう、ちんぷんかんぷんですよ。ちんぷんかんぷんですよ、本当に。
七味
私もアンサンブルで1回出させていただいたんです。蜷川さん。
山口
本当ですか。
七味
その時は若手にはもう、すごく優しくなってた、というか。
山口
あ〜!そのときの蜷川さん、僕は知らないです。
七味
はい。すごくお厳しかったって聞きますが。
山口
そう、なんであんなに傷つくんだろうって、今でもわかんないすけど。芝居って傷つきますよね?
小早川
わかります。わかります。
山口
ね。でも冷静に考えて、別に傷つく必要はないんだけど。でもすごいダメージが、ドーン!てくるんですよね。
七味
言われることに対して?
山口
うん。何かそれをやることに。
七味
そうですね。そういうこともありますね。なんか逆に、今回ちょっとわかったかも、成長できたかもっていう瞬間もありますか?
山口
ありますけど、でも基本的には何かずっとぐるぐるぐるぐる回ってる感じします。自分では。
小早川
でも初舞台が蜷川さんて、やっぱ想像できないほどすごいことだな、と思うんですけど。やっぱり今でもいろんな演出家さんとか役者さんとかと共演する時に、どこかで見られてる、もしくは今だったらこう見てもらいたい!みたいな・・・
山口
あ、そういうのはないですね(即答)。
小早川
あ、ないんですね!(笑)
山口
うん、そういうのはないです。
小早川
ありがとうございます!(笑)
七味
いいお話です(笑)
後半
七味
今回の「劇トクッ!」は俳優の山口馬木也さんをお迎えしてお届けしております。引き続きよろしくお願いいたします。
山口
よろしくお願いします。
小早川
よろしくお願いします。
七味
お話の続きをお伺いする前にですね、山口さんも主演でご出演されます、CoRichの初めてのプロデュース公演はですね、【名作リメイク】というのがテーマなんですけれども、ゲストの方がもう一度見たい名作を、今お伺いしておりまして。馬木也さんがもう一度見たい名作は何でしょうか?
山口
そうですね。僕がもう一度見たいのは、平成中村座の『夏祭浪花鑑(なつまつりなにわかがみ)』っていう作品でして、僕はその大阪初演、テントでやっているのを観たんですけど、そのとき観た衝撃的な、何か奮い立つような感じが今でも忘れられないので、それをもう1回観たいなっていう思いは、この年になってもあります。
七味
だいぶ前に観た作品ですね?
山口
だいぶ前ですね。もう20年ぐらい前になるのかな。うん。
七味
それで、今もこうやって覚えてるのは、すごい素敵ですね。
山口
お亡くなりになった勘九郎さんと、芝翫さん、橋之助さん、あと笹野さんとか出られてたんです。それが、東京とかでもやってる作品なんですけど、東京とはちょっと違って。大阪の公園でテントを組んでやってて、ご存知の方は多分、その屋台崩しっていうか、後ろがボーンと抜けるっていう・・言っていいのかな?今もね、ずっと上演され続けている公演なのであれなんですけど、そのときに、まぁもうびっくり度肝抜かれて。そのパーンて開いた瞬間に、後ろの公園がバーっと抜けてて、そこには散歩してる人とかいるんですよ、家族連れとか。そこにね、お祭りの櫓(やぐら)か何かを組んで、どんどんどんどんそこに向かって2人が走り出していって、また戻ってきて、みたいな。後にも先にもあんなに劇場で大騒ぎして「ワー!!」とかやったのって、ない気がする。
七味
えー!じゃあもう、お客さんの方も「ワー!!」って?
山口
もう、みんなみんな。「ワー!!」みたいになって。向こうでもちろん煽りはあるんですけど、多分それがなくても、もう無条件で「ワー!!」てなったのを覚えてますね。
七味
いやもう心から、こっちが沸き上がって熱くなっちゃう感じですね。すごい。
山口
そうそう。
小早川
今聞いてるだけで、僕も鳥肌立ちましたもん。劇場だと感じられない躍動感ですよね、それって。奥行き、というか。
山口
うん。本当に本当に。いろんな趣向が凝らされていて始まる前からもう演出が始まっていて、お客さんも非常にリラックスして、そこの場所に居れるっていう。その何かこう、空間を共有できる、みたいなのも最初から作られているんで、あとはもう役者さんがこれでバーっていう感じで。
七味
へぇ〜!他に例えば、野外劇とかご覧になったりとかはしたことあるんですか?
山口
野外劇はね、自分が出たことはあるんですけど、観たことはないかな。
七味
やったときは、何を?どの野外劇をやったんですか?
山口
僕が野外劇やったのはね、シェイクスピアのね『夏の夜の夢』っていうのをやって。
七味
わぁ〜!!じゃあ、ちょっと森みたいなところでですか?
山口
いや、それは小豆島の島でやったんですよ。
小早川
おおお〜!!
山口
小豆島って面白いところで、農村歌舞伎っていう「農村歌舞伎小屋」っていうのがあって、当時は多分ね、結構あったんですよ。30とか40あったんじゃないかな?うん。ちょっとごめんなさい記憶はわかんないですけど。でも僕がやったときは、もう1つぐらいしか残されていなかったのかな。こうやって、日本建築の何かそういう建物があって、そこが舞台になっていて、こっちはこう、ちょっとなんか坂みたいになっていて、そこにお客さんが座って見るんですけど。そのときに、ちょうど後ろに月が・・・。
七味
わぁ〜!!
山口
そこでやったから、面白かったな。
七味
やっぱり夏ですか?
山口
夏です。夏です。
七味
『夏の夜の夢』をしっかり夏の夜に!すごい素敵ですね。
小早川
その時の情景が、今もう浮かびましたもん。
山口
うん、すごいですよ。月をバックにああいう作品をやるっていうのは何か、いろんな力をもらえるというか。
七味
今までいろんな作品やられてきたと思うんですけれど、馬木也さん自身がどんな演劇が好きとか、そういう好みはありますか?
山口
う〜ん・・・好みは・・・結構いろんなものが好きではあるんだと思うんですけど、一言で「よくわからないやつ」とか結構好きかな。
七味
へぇ〜!結構頭でぐるぐる考えたりとか?
山口
うん。理解できないことであったりとか、何か想像力が膨らんだりとか、みたいな。なんか毛穴が立つような感じになる瞬間があるんですけど、そういうのはジャンル問わず、多分好きなんだと思います。
七味
なるほど。すごい。今までももちろん、そして先ほども蜷川さんの話がありましたけど、いろんな演出家さんと出会ってきたと思うんですけれども、特に印象的な、もしくはすごく気が合うなっていう方はいらっしゃいますか?
山口
気が合うというか、やっぱり、蜷川さんもそうですし、新国立劇場のね、芸術監督されてる小川絵梨子さんとか、あとTHE・ガジラの千葉哲也さんとか、栗山民也さんとか、他にも諸々挙げればきりがないぐらい・・・。
七味
本当ですよね。
山口
そうですね。で、今回、今話していいのかわからないですけど『イノセント・ピープル』っていうのをやらせてもらってて、そこで劇団チョコレートケーキの日澤さんが演出されてるんですけど、また何か良い出会いだなって僕は思ってて。すごく面白い人、面白い演出だなって思って、目が離せない。
七味
すごい面白そうな舞台になりそう。日澤さんの作品は今までご覧になったりしたことはあるんですか?
山口
僕、知らなかったんです。恥ずかしながら。で、みんなに言ったら「え?え?」とか言われて、そうなんだ、そうなんだ、って。
小早川
数々の演出家さんだったり作品に携わられると思うんですけど、日澤さんとお会いするのが今回“初”ということで、どういったご縁、きっかけがあるんですか?
山口
それは僕ね、聞きたいんですよ。このお話をもらって、なぜ僕のところにこういうお話が来たのかって、僕も謎で。でもこれは終わってから聞こうかなと思ってて。怖くて聞けないんですよね。
七味
(笑)いやいや、でもタイミングは確かにそちらの方が良いし、なんだかエモいですね。きっと、今聞いちゃってもね。
山口
もうここら辺まで出てる。なんでだろうな、って。なんでこう、選んでくれたっていうか、作品に参加させてくれたのかっていうのは、ちょっとまだわかんないけど。今もう現状ここに居るから、居ていいんだと思ってやってますけど。
七味
もちろんですよ。
小早川
でもその答えなり、何かがその作品の中に隠れてるかもしれないんで、これはね。
七味
そうですね。観たらね、本当に馬木也さんならではのってね。
山口
いや〜どうなんですかね。そうだったら良いですけどね。
七味
楽しみ。
小早川
楽しみですもん。観に行くのが、ただただ。
七味
:馬木也さんさんは、殺陣もずっとやられてて、舞台を拝見してすごく素敵だなと思うんですけれども、どういうところで殺陣をやり始めたんですか?
山口
最初に時代劇にキャスティングしてもらったときが初めてで。
七味
うんうん、そこから学び出したみたいな?
山口
そうですね。で、舞台のときに京都の方とご一緒したときに、いろいろと、ひっつきもっつきして教えてもらってってって感じで。
七味
へえ〜!それでやってみたらやっぱり楽しくて、みたいなこともあって?
山口
そう。やってみて楽しくてっていうのもあるんですけど、1つの理由は、最初にその立ち回りっていうものを舞台でやったときに、劇評みたいなものあるでしょ、新聞かなんかで。そこで書かれたことがあるんですよ、僕の立ち回りのことについて。で、そんなことが初めてだったわけですよ。それで、これは1つ自分の中でちゃんとできることにしよう、と思ったんですかね。だって、演劇って何をもって良いとか、上手いとか、下手とかって、なかなかわからないじゃないですか。
七味
確かに。あまり資格もね、無いですし。
山口
そうそうそう。だから、その中で1つ「武器」とは言いませんけど、「これはできる」っていうものがあると、自分の中で、プラスになるんじゃないかなと思って、じゃあこれだけはちょっとやろう、と思ったんです。
七味
じゃあ、その劇評は良いことが書いてあったんですよね?
山口
そうそう。
七味
すごく素敵なきっかけですね。
小早川
その殺陣を続けていく中で、演劇を今続けてるっていうところで、両方続けることで重なってきた部分とか、ここは繋がってるな、みたいこともありますか?
山口
ありますね。そこから学んだことっていうのはすごくいっぱいある気がします。結構そこには救われたな、と思います。時代劇っていうものにも救われたし、そういう立ち回りっていうことにも救われた気がしますね。
七味
映画とか演劇どちらもたくさんやられてらっしゃると思うんですけれども、違いはありますか?
山口
昔はね、あるように思ったんですけど、今はそんなに感じないですね。ただ舞台って、見る・見せる方向っていうんですかね、お客さんは絶対こっち側。まぁ、谷になってるとか円形になってるとかってありますけど、やっぱり、それの違いはありますね。あとは対象物が無い、っていうか、この環境でお芝居するとしても、ある程度の何割か想像していかなきゃいけないじゃないですか、自分で。その「絵」を見ていかなきゃいけないっていうことでいうと、やっぱりちょっと、テレビとは違う何かを働かせないと舞台はできないのかな?とは思いますけど。でも基本は一緒だと思ってます。
七味
そうですね。テレビだと、あんまり抽象的なテレビってないですよね。抽象的な演技とかね。
山口
そうですよね。でも基本は多分そこにあるものと何か一緒にやる、一緒に作る、っていう、その相手役だったり、照明だったり、お客さんだったり、みたいなところで何か共有して作るっていうのはすごい思いますけど。
七味
映画とか演劇で、ターニングポイントとなった作品って、ありますか?
山口
全部に近いかな。
小早川
わぁ〜素敵!
七味
なるほど、1個1個ですよね。でもそれだけ、確かに錚々たる今の演出家さんとか、監督さんとかとご一緒して。
山口
うん。でもそれ以外でも、なんで?って思ってても、そこで気づくこともあるじゃないですか。なんでこんなに、こんなふうに思ってるんだろう?とかって、また自分にそれを向けることもできるから、本当にそこで揉めたりとか、喧嘩したりとか、何だ?とか思うときもあるじゃないですか。それでもやっぱり、身にはなっているなと思います。
七味
何か、言える“喧嘩したエピソード”ありますか?
山口
あります。あります。だけど、言える“喧嘩(したエピソード)”は無いんじゃないかな。
小早川
いくとこまでいってるんですね?(笑)
七味
失礼しました(笑)
山口
でも基本、数える程度ですよ。僕は基本的にそんなことはしないです。まして自分のこと、かっこいい話だけど、自分のことで何かっていうことはないですね。
七味
かっこいい話です。
山口
でしょ?俺も思った(笑)
小早川
(笑)
小早川
映像、舞台ともちろん先ほどおっしゃったように、表現方法が違うと思うんですけど、芝居っていう通ずる部分で、現場現場で大切にしてることだったりはあるんですか?
山口
う〜〜〜ん・・・うん。
小早川
教えてください!それを!(笑)
山口
(笑)う〜〜〜ん・・・こんなことを話すと、すごく長くなることで。でも僕の中では「思いやり」だと思っていて。やっぱり1番は、一緒に作っていく仲間と、周りと、そこから小道具が出てきたりとか、そういうものに対するっていうのは全部。そういうところは大事にしたいし、しようと思ってますね。
七味
少しずつ学ばれたり感じたりして、今の馬木也さんがそうやって感じるんだと思うんですけど、何かきっかけがあったりしたんですか?
山口
自分1人で何かやろうとしても、やっぱり出口が見つからないことが多かったんですよ。だけど、周りにちょっと目を向けてみたときに、それが全部自分に返ってくる。結局自分のためにやってるんですけど、「思いやり」とは言えど。そんなふうに考えたのが、やっぱりいろんな演出家さんとお仕事して、言われた言葉で。自分なりに、どうやったら?どうやったら?っていうことでなんとなくそういう事かな、ってなっただけで、何かこれ!っていうきっかけはなくて。
七味
現場でそういうふうに感じることが、もしかしたら1番の経験と勉強になるんだと思うんですけれど。
山口
そうですね。あと、偉大な先輩っているじゃないですか。いますよね?
七味
はい。
山口
本当にそういう人と出会う機会に恵まれてて、僕は。
七味
例えばどなたとか?
山口
いや、もう挙げたらキリがないし、誰から挙げるかも本当にあるんだけど。もちろん最初はやっぱり藤田まことさんっていう、僕の父親役をやってくれた方。そして平幹二朗さんであったりとか、もう本当に、多分皆さんが知っているようなお名前もいくつも挙げられるんですけど。そういう人たちが今そこで、ああいうお芝居をされてるっていうこととか、どういうことなんだろう?と。平さんなんて僕が一緒に芝居したとき、まともに歩けないんですよ。杖ついて歩いてて、でも舞台上のカーテンコールで笑顔で走って来るわけですよ。出来ないはずなんですよ。だけど、舞台上ではそれが出来るっていうこととか・・・。いや〜〜〜・・・。
七味
人間の神秘だし、俳優の神秘だし、どこから可能にしているんですかね?
山口
だからそれがどうしても気になって。でも、やっぱりそこまで皆さんすごいことになっているとね、おいそれと聞けないんですよ。
七味
確かに!魔法使ってるのかもしれないです(笑)
山口
そうそうそう(笑)それでも1回飲み会で、広島で芝居をやってる時だったのかな。その時に、平さんのお誘いを受けて、みんなで飲んでる時に、もう「えーい!」と思って、「平さんて、なんでそんなお年まで、肉体的にも大変なのに芝居を続けているんですか?」って聞いたんですよ。まぁ多分、「好きだからかな」って言うんだろうな、と思ったんです。そしたら、ボソボソっと。「いや僕、小っちゃいときに広島にいてね。そのとき仲間が(原爆で)死んだんだよ」って。「その仲間達がやれって言ってる気がする」って言ったの。その時「あーーー・・・」と思って。ただ「あーーー・・・」と思っただけ。そこに何の感想もないけど。でも、何かを感じたなと。平さんは別にそんなに深く言ってるわけじゃないけど。でもそういう何か、「使命」とまでは言わないですけど、何かがこう、あるのかな、みたいな。
七味
すごい。これ本当の話ってところがすごいですね。
山口
ね。そんなふうに感じさせてくれる先輩と、結構出会っているんですよ。
七味
すごい。すごく色んな縁を手繰り寄せられていらっしゃるんですね。
山口
ラッキーですよね。
七味
素晴らしい。仲の良い俳優さんとかはいらっしゃるんですか?
小早川
例えば、共通の趣味を持って定期的に会う仲間みたいな。
山口
2年前ぐらいにゴルフを始めて。それで、ゴルフが好きな人と、たまに行って、みたいなことがあります。
小早川
ヘぇ〜!ゴルフを始められたのが2年前ですか?
山口
そう。もうめちゃくちゃハマっちゃって。クラブをある方からいただいて、全く興味はなかったんですけど、なんかハマっちゃったんですよね。
七味
やったら面白いんですか?プレーが面白かったんですか?
山口
いやぁ〜面白い。なんですかね。なんか、打ちっぱなしも面白いし、コースも面白いって感じで。とりあえず、ずっと握っていたい、みたいな。
七味
ヘぇ〜!よくゴルフ行く人って、それ(プレーが面白い)もあるけど、やっぱり仲間と行くっていう面白さも・・・
山口
あ、そういうのじゃない。僕はもう単純に(ゴルフが好き)。駅でこうやってる人ですよ、もう。(ゴルフの素振りをしてみせる)
七味
あはは!(笑)
山口
奥さんがね、「やめてくれ」って言います(笑)
七味
そうなんですね(笑)。感覚を試したくてやっちゃうんですか?
山口
う〜ん・・・。これ、やってない人にはわからないだろうな、この感覚。ベッドでゴルフのYouTubeとか見ても、すぐベッドの横にスマホ置いて・・・(ゴルフの素振りをする)もう、病気だと思う。
七味
思いついたらやらなきゃ駄目なんですね。やっちゃうんですね。あ〜・・・もう中毒です。
山口
中毒でございます。
七味
でも、良いですね。2年前にそんなすごくハマれる何かに出会って。
山口
そう。僕、趣味はなかったんで、唯一の趣味として。
小早川
いや、ジャンベがあるじゃないですか。(笑)
山口
いや、でもそれは若いときで、今はやってないですよ。
小早川
そうかそうか。
七味
趣味ではないんですね、ジャンベはもう。
山口
趣味じゃないと思いますね。
七味
じゃあもし、役としてドラム役とかジャンベを叩く役があったとしたら?
山口
そしたら、“仕事”で頑張ります。
七味
あ、“仕事”で頑張るんですね(笑)だいぶ慣らさないと、やっぱりもう戻らないものですか?
山口
どういうものをやるかにもよるんじゃないですかね。これ位のものだったら、これ位でできるかな、っていうのはあるけど、もっともっとクオリティの高いものとか、難しいものを求められたら、それは、やらなきゃどうしようもないと思います。
七味
なるほど。
小早川
仕事に対する熱量と、趣味は趣味で完結できるからこそ注げるもの、とは違いますよね。
山口
うん。いっそのこと仕事にならないかな、と思ってる。ゴルフ。
小早川
あ、すごい熱量をかけてますね?!ゴルフに(笑)
山口
これだけ芝居のことを語ってて、ゴルフをメインに置くっていう・・・。何とかゴルフで!って(笑)
七味
まぁ、確かに。ゴルフの話になった時、眼がキラってしましたもん(笑)
小早川
全然違いますよ、前半と(笑)
山口
はい。でも今このチャンネルでゴルフの話してもあれなんで。
小早川
危ない!今、ゴルフの波が来た(笑)
七味
そうなんですね。でも確かに、あんまり“ゴルフ俳優”って、テレビとかにはそんな出てないから。
山口
だから発掘しようと思って。
七味
いいじゃないすか。馬木也さんがジャンベでやったみたいに多人数で「これがゴルフ俳優です!」みたいな。
山口
そうそう。こういう所でいっぱい言ったら、いっぱい集まってくるかもしれないから。
七味
確かに。私達がたくさん布教していきましょう。馬木也さんがご自身で思う、馬木也さん自身は、どんな俳優さんだと思われますか?
山口
どんな俳優・・・。“顔の濃い俳優”じゃない?
七味
外見ね!(笑)
山口
これは多分鉄板でしょう。でも性格はね、そんなに僕、濃くないから。たまに自分の容姿を忘れてはしゃぐ時があるんだけど、気持ち悪いな〜と思うんです。
七味
いやいやいや、そうなんですか?!はしゃぐ馬木也さん?
山口
(心の中の)ちっちゃい俺が、もうどうしようもなく暴れ出す時があるの。そしたら、あ、でも俺こんな顔してたな、と思って。やっちゃいけないんだろうなこれ、と思う。
七味
そこは冷静に、判断するんですね?(笑)
山口
そうそう。
七味
全然かわいらしい。いいじゃないすか。はしゃいでください。
山口
あ、そうそう。ちゃんと答えなきゃいけない(笑)。どんな俳優かというと、多分、不器用な俳優なんじゃないかな、と思います。もう単純にシンプルに。いい意味じゃなくて、単純に不器用だな、と思います。
七味
いや〜、そうなんですね。でも、結構そういう俳優さんの方が好きな演出家さんも多いですよね。
山口
そこはわからないですけど。“いい意味で不器用”なのと、“別の不器用”ってのはちょっと違うので。僕の中では“不器用”って言葉になってるだけだよね。
小早川
でもその気持ちが、先ほどもおっしゃっていた演劇の芝居っていうものが、わからないから続けていく、みたいなパワーにもなっているところはあるんですか?
山口
そうですね。もうそれしか多分ないかなって思いますね。でもね、お2人もそこは共感してもらえるでしょう?何かここ越えた!って思って、でも新しいモノが来て、またゼロからかよ!と。
七味
思います。同じ現場とか稽古中にも「あっ!」て思っても、すぐ「違った!」になりますもんね。
山口
何回か繰り返して、回転していくと、今引き出しを使ってるってこともわかるし。そしたらもう嫌になるし、考えたらキリがないですよね。
七味
確かに確かに。それがでも面白いですよね、キリの無さが。はしゃぎ馬木也さんは、どんな時に見られるんですか?
山口
・・・いつでも。
七味
いつでも?!(笑)
小早川
そうなんですね?!(笑)
山口
しょっちゅう調子に乗ってるよ。お祭り騒ぎだから。「おーい!止まれよ!」って思うけど、もうドンドコドンドコやってるよ(踊り出す)。今とかそうじゃん?(笑)
小早川
見れた!(笑)
七味
今の?!見れた!やったー!(笑)稽古場が気になって気になって。普段やっぱり私達って、舞台とか作品の中の馬木也さんしか知らないじゃないですか。もちろん、はしゃぐ役ならそうするんでしょうけど。こういうインタビューとかではね、やっぱり落ち着いてらっしゃる感じのイメージがあるので。
山口
顔が濃いからね。
七味
(笑)
七味
舞台『イノセント・ピープル』の話を、ちょっと聞いていきたいと思うんですが。先ほど演出家の日澤さんの印象は少し伺ったんですけど、座組の皆さんも初めまして、だったんですか?
山口
そう。みんなご機嫌な人ばっかり。
小早川
ご機嫌な人?
山口
そう。一番重要だと思うな。
七味
そうですね。どういう意味で、ご機嫌なんですか?
山口
楽しいんです、みんな。何か一緒に作っていったりとか、何気ないことがすごく楽しく、なんかいいなぁって思って。稽古場が楽しいから行きたくなる。そういう空気に溢れてる。本当に。
七味
『イノセント・ピープル』のはどういう内容なんでしょうか?
山口
内容を言ってもいいんですもんね?だってね、名作リメイクだしね?
七味
そうです。そうですね。
山口
書かれた作家さんは畑澤さんっていう方なんで、日本人の方ですけど、本では登場人物1人を除いた全員、外国人。アメリカ人であったり別の国だったりする人も中にはいるんだけど、基本はアメリカ人で、原子爆弾を作った男たちの話です。
七味
うんうん。そういうサブタイトルですよね。
山口
そうですね。僕はその中で科学者。あとは軍人がいたりとか・・・。その中で「果たしてあなたたちがやったことはどうだったんだ?」みたいなことを。・・・あんまり内容は言いたくないな、と思いながら。(笑)
七味
そうですね、ちゃんと観て欲しいですよね。
山口
でも、そこが作品のテーマにはなっていて。何だろうな、もう本当にね、まだ僕も捉えきれてない部分があって。だから今は、もう稽古場で、何か見逃してることないかな?シャットアウトしてないかな?とかって、いろんなことをずっと、感じようとしているところで。本当に、ちょっと2次元ではなかなか読み取れない部分が多々あって。そこにはやっぱり、ご機嫌な演出家さん、ご機嫌な仲間と一緒じゃないと、どうしてもこの核心に触れられない、みたいなところがあって。
七味
稽古中はもちろん、皆さん作品作りで作品のことを考えられると思うんですけど、休憩中とかは、作品の話をするんですか?それとも、ご機嫌に違うことを話されてるんですか?
山口
迂闊なことは喋れない感じですけど、でも何かそれに関連するようなことを話している気がします、みんな。でもたまに、全然脱線して、笑いが起きたりも。
小早川
『イノセント・ピープル』の副題は「~原爆を作った男たちの65年~」ということですが、これは時代を飛んだりもするんですか?
山口
そうです。僕は、25歳から90歳までを演じるんですよ。
小早川
おお〜!その情報だけ聞くと、役者側からするとなかなかハードルが高いというか、やりがいも感じる部分ではあると思うんですけれど。
山口
そう。そこで何か扮装を変えたりとか、何かをしたりっていうことができないんですよ、戯曲の構造上。だからそこは、日澤さんが演出で何かを作って考えてくれるか、あとはもう僕ら役者さんが体現して作っていかなきゃいけないところ。難しいな、とは思うんですけど、非常にやりがいがある、楽しみな部分です。
七味
そんなところも、もしかしたら見どころの1つかもしれないですけど。
山口
確実に、そこは見どころにはなると思います。
小早川
あともう1つ。キャストのアメリカ人9割を日本人キャストがやるわけじゃないですか。でも日本に原爆が落とされたというこの歴史的事実は変わらないもので。それを日本人がアメリカ人を演じるっていうところもまた、客観的に見え方が・・・
山口
そう、だから、なんだろう。普通の戯曲と違っているところは、日本人であることの感情の揺れ、個人の感情の揺れみたいなものが出るとちょっとまずいんですよ。向こうは原爆を作った人たちの話で。だからやっぱり不思議なもので、みんな罪悪感みたいなのもあるんですよ、日本人としてね。でも演劇でその役になろう、と思ったら、そこは絶対"排除"していかなきゃいけないところで。だから、結構そこは苦しい作業かな、と思いますね。あとはもう、お客様にどう見てもらうかだけなんですけど。やっぱり、あるじゃないですか、色々な思いが。それを全部、本からも紐解いていって、自分の感情も捨てていくというか、そういうことを今、やっていますね。
小早川
戦いでもあり、挑戦でもある、その作品を作るメンバーだからこそ、ご機嫌な人たちが集まってるのは、面白いですね。
山口
そうですね。面白いですよね。そういうものなのに、現場はすごく楽しくやってるっていうことが、演劇の「救い」とまでは言わないけど、面白いところだなって思って、稽古に参加しています。
七味
ますます楽しみになる。
小早川
本当にもう、今のお話だけでも楽しみになりましたね。
七味
ね。そんな『イノセント・ピープル』の、改めて公演情報をお願いします。
山口
お願いします!
小早川
はい。ご紹介させていただきます。CoRich舞台芸術!プロデュース【名作リメイク】『イノセント・ピープル ~原爆を作った男たちの65年~』は、2024年3月16日土曜日から3月24日日曜日、東京芸術劇場シアターウエストにて上演されます。詳しくは動画説明欄にリンクがございます。公演サイトをぜひぜひご確認ください。
七味
最後にですね、今後の馬木也さんの野望・展望をお伺いできたらと思うんですが。
山口
それね、ゴルフのスコアでね、80だよねって。
小早川
(笑)!
山口
じゃなくて今後の展望ね、役者としての(笑)
小早川
はい。お願いします!(笑)
七味
ゴルフを入れ込んでも大丈夫ですよ、もちろん(笑)
山口
うーん・・・いやいや、役者としては、もっともっと、これから年齢的にも、どんどんどんどん体力が落ちて、体力落ちる=気力も落ちてくると思うんですよ。だからもっともっと、いろんな人と楽しみを共有していって、そっちの方を増やしていかなきゃな、と思うんで。そこをどうしたら自分が吸収できるかとか、自分の周りにそういうことを集められるかとか、そこに参加できるか、とかっていうことを思っていますね。もうね、肉体は衰えていくんで。
七味
本当ですよね。私も馬木也さんとぜひ共演できるように、ちょっとわくわく、頑張っていきたいと思いました。
山口
いやいやそんな・・・(ペコリ)。まずは七味か一味かをはっきりした方がいいですね(七味が着ているTシャツを指して)。
七味
しっかりそこチェックしてるじゃないすか(笑)!では本日のゲスト、山口馬木也さんでした!
山口
ありがとうございました!
七味
ありがとうございました!!
小早川
ありがとうございました!!
七味
はい、山口馬木也さんをお迎えした「劇トクッ!」でした。しかも俊ちゃんは初MCでした!いかがでしたでしょうか?
小早川
いや〜もう本当に楽しい時間をありがとうございました。馬木也さんとは短い間だったんですけど、お話させていただいて、やっぱりベースにある「思いやり」っていう言葉から、演劇を作っていく力に変わっているんだなっていうところに僕はすごい感銘を受けて、ぜひ現場でもご一緒したいですし、自分もこれからどんどん精進していきたいなと思いました。
七味
そうなんです。あんなに本当に穏やかに優しい方でね。ご自分がいうほど、(私は)濃いって思いながら喋ってなかったから、お顔が(笑)。ご自分でもあんなに言うほど、周りから言われてるのかなって。
小早川
ご機嫌な馬木也さんもね。見られてよかったですよね。
七味
うん、とっても嬉しかったです、本当に。馬木也さんありがとうございました!
小早川
そしてですね、CoRich舞台芸術!チャンネル「劇トクッ!」では、毎回大注目の演劇人にお越しいただいております。今後、話を聞いてみたいゲスト、気になる劇団などございましたら、お気軽にコメントください。そしてですね、チャンネル登録、グッドボタンもよろしくお願いします!
七味
それではまた次回お会いしましょう。
七味
ありがとうございました!!
小早川
ありがとうございました!!